抜歯原因の第3位は「歯根破折」
香川県高松市の噛み合わせ専門歯科医院 吉本歯科医院の吉本彰夫です。
歯を失わないために多くの方は「虫歯」と「歯周病」だけ予防しておけば安心と思っています。
定期的に歯のメインテナンスに通って歯の掃除をしていれば大丈夫。そう思われている方は非常に多いのではないでしょうか?
しかし、歯の掃除だけでは歯の予防には片手落ちです。
北欧の国、スウェーデンという国をご存じですよね?
スウェーデンでは世界でも有名な予防歯科の先進国です。
かつてはそんなスウェーデンでも多くの人が虫歯や歯周病で歯を失っていました。
しかし、多くの国民が歯を失って健康を損ねていく状況を重くとらえたスウェーデン政府は予防歯科を国家的なプロジェクトとして開始したそうです。
その結果現在北欧スウェーデンでは「歯周病」や「虫歯」が原因で抜歯することは減ってきました。
スウェーデンでは予防歯科が非常に発達しており「歯周病」や「虫歯」になる人そのものが減っています。
そんなスウェーデンでは現在、歯を抜かないといけないという抜歯診断にまでなってしまう最大の原因は「歯根破折(しこんはせつ)」と言われています。
これは歯の根までまっぷたつに割れてしまっている歯です。
比べて日本ではいまだ「歯槽膿漏(歯周病)」や「虫歯」が抜歯原因の第一位と第2位です。
そして抜歯原因の第3位が「歯根破折」です。
※平成30(2018)年11月公益財団法人 8020推進財団より抜粋
このままいくと日本でも歯周病や虫歯が原因による抜歯がなくなり「歯根破折」が抜歯原因第一位となるかもしれません。
下記の図をご覧ください。
抜歯原因の調査です。
平成17年調査の時は破折で歯を失っている人は11.4%
しかし
平成30年調査になると破折で歯を失っている人は17.8%にまで増えています。
また、神経を取る治療をしている歯と、神経が生きている歯では破折で歯を失うパーセンテージはこれほども違います。
神経を取っている歯は神経が残っている歯に比べて「破折」しやすいとなっています。
神経を取った歯は枯れ木と同じ状態ですので少しの力でも簡単に歯が割れたり折れたりします。
歯科先進国のスウェーデンであっても歯が割れる「歯根破折」になると抜歯しなくてはらない、という診断は同じです。
しかし日本では「歯の根が割れてしまったのでこの歯は抜くしかありません」と診断を受けた場合、ほとんどの患者さんは「歯は抜きたくない」「抜かずに残して欲しい」と思われると思います。
また、歯が割れた程度で歯を抜かなくてはいけないの?と思われる方の方が多いのではないでしょうか?
歯が割れることは信じがたい。
割れたら接着材でくっつければいい、とそう思われるのではないでしょうか?
実際に私の医院には
「歯を抜かないといけないと診断されたが抜かずに残せる方法はないか?」
「抜歯診断を受けたが本当に抜かないといけないのか知りたい」
「割れた歯をくっつけて欲しい」
というご相談、非常に多いです。
歯根破折という症状はまだまだ知られておらず、歯根破折になってしまうと日本の保険診療では「抜歯治療」となるということを知らされていません。
日本の健康保険診療の中には「歯根破折した歯を治療する」「保存する治療」というのはありません。
破折した歯を接着して保存する方法はありますが、一度割れてしまった歯は強度が弱くなり割れやすいというのも事実です。
歯根破折を起こしてしまったら、抜歯になってしまうんだということを知って頂くことが
まずは本当に重要なことです。
歯根破折を引き起こす大きな原因は過去に受けた治療です。それは歯の神経を取るという治療です。
歯の神経を取ってしまうと歯は枯れ木と同じ状態になります。
強度は健康な歯の10分の1まで一気に落ちます。
神経がある歯は、強くしなやかで強度があり少々の噛む力がかかっても折れません。
しかし神経がない歯は弱く枯れ木状態ですので強度がなく少しの噛む力で折れてしまいます。
歯の神経を抜いてしまう治療から悪循環が始まります。
将来、歯根破折で大事な歯を失なわないために知っておいて欲しいことがあります。