歯の根元から歯が割れる歯根破折
香川県高松市の噛み合わせ専門歯科医院 吉本歯科医院の吉本彰夫です。
歯の根元から割れていると診断されたが治療法はありますか?というご相談がよくあります。
歯の根っこが割れることを歯根破折(しこんはせつ)と言います。
歯の根っこが割れる(歯根破折)とは?
歯の根っこが割れる歯根破折(しこんはせつ)は、歯茎の中にある歯の根っこ部分が割れてしまうことを言います。
目に見える歯の頭の部分が割れてしまうことは「歯冠破折」と言います。
歯の外傷で最も多いのが歯冠の破折です。
歯の割れ方にもよりますが歯の頭の部分だけが欠けてしまった場合には欠けた部分を補う治療ができます。
しかし、歯茎の中にある歯の根っこ部分までヒビや亀裂が入っていたり割れてしまっている場合には歯根破折となり抜歯になってしまうケースが非常に多いです。
歯は目で見えない部分は非常に複雑な構造をしています。
歯の表面の「エナメル質」、内部の「象牙質」、歯根(歯の根っこ)を覆う「セメント質」、「歯髄」(歯の神経)からできておりそれぞれが、非常に硬い成分でできています。
歯の根っこはエナメル質よりは柔らかい象牙質やセメント質でできていますが、それでも歯は骨よりも硬い成分です。
ではどうして歯の根っこが割れるのかお話します。
歯根破折になる原因
歯根破折とは歯の根っこが割れているということになります。
破折は大きく分けると2つです。
①垂直性歯根破折 垂直方向(縦)に歯の根っこが割れたもの
垂直性歯根破折の大きな原因は、物理的に強い圧力が歯の根っこにかかってしまうことで起こります。夜間の歯軋りや、日常的な食いしばりなどによっても起こります。
②水平性歯根破折 水平方向(横)に歯の根っこが割れてもの
水平性歯根破折の原因は、歯の頭が割れる歯冠破折と同様、ぶつけたりして過度な衝撃が加わる外傷によることが多いです。過度な衝撃による外傷の多くは歯の頭の部分が折れたり欠けたりする歯冠破折となりますが、歯の位置や衝撃の方向により歯の根にまで衝撃が伝わって歯の根が横に割れてしまう場合もあります。前歯に非常に多い例です。
歯ぎしりや食いしばりがあったり、歯並びや噛み合わせが悪い場合、その歯だけに強い力がかかり続けます。そうすると歯の根っこに強い圧力が日々かかり続けることで歯根破折を引き起こします。
噛む力によりおこる破折は、日々の噛む力が積み重なり起こります。最初は小さなヒビや亀裂が入り、どんどん進行しある日突然まっぷたつに歯が割れます。歯も金属のように経年劣化を起こし「疲労」状態になっています。長く使い続けることによりある日突然割れるのです。雨垂れ石を穿つという言葉があるように決して強い力だけで破折が起こるのではなく弱い力であっても蓄積されてしまうと小さな力が歯に穴をあけるのです。
歯冠破折のように1回でパーンと割れるというよりは、歯の根っこに小さなヒビが入り、そのヒビがだんだん毎日の生活の中で持続的な強い力がかかることで、ヒビが徐々に広がっていって割れていきます。
私はよく患者さんに割りばしを使ってご説明をします。
これは割りばしの写真です。
割りばしに力がかかると隙間が開きます。
力がかからなくなるとその隙間は閉じます。
力がかかって隙間が開くと歯の場合には歯がしみます。
力がかからなくなるとその隙間が閉じてしみなくなっていきます。
割り箸を何度も何度も力を加えて、ある限界点に到達した時一気に割り箸は割れてしまいます。
われた割り箸の断面は硬いですよね。直線的ですよね。
歯も同じように割り箸を割った時のように直線的に硬い面を残しながら割れてしまうのです。
割れた部分のヒビが有る程度進んで、噛むことにより歯を押し広げるような力が働く様になると、歯の中の歯髄(神経)を刺激し痛みが出ます。
このように歯が内部から割れていくため、通常の歯の割れよりも厄介ですし割れた隙間から歯の根元にばい菌が侵入するため歯茎も痛める危険性があります。
この歯の根から割れる歯根破折となってしまうと多くの診断は「抜歯」となります。
歯根破折は歯の抜歯原因の上位となっていますが多くの方はこの歯根破折をご存じないのが現状です。
虫歯が大きく進行し歯の根っこの治療(神経を取る治療、根管治療)をしている歯は、歯根破折が起こりやすくなります。理由は虫歯を削り取る時に歯の根っこの内部も削っています。歯の根っこの治療を行う時も、歯の内部の歯質を少しずつ削り取っています。そのため歯の厚みは薄くなり、弱くなっている状態です。そんな状態の歯に過度な力が加わり続けたら当然、割れやすくなります。歯の神経治療を何度も繰り返している歯は、その度に歯が薄く弱くなっているため、歯根破折のリスクは非常に高いです。
歯根破折の症状
歯肉に膿疱ができる
歯の根っこ(歯根)にヒビや亀裂が入っている場合その亀裂の隙間からお口の中にある細菌が侵入します。その細菌が歯の根の先に膿を作り根の先に細菌の「かたまり」ができまてしまいます。この細菌のかたまりである膿が骨を通って歯肉の表面に出口を作ります。舌で触るとできものが出来ているように感じます。この膿はご自身の体調により出たりへっこんだりします。口の中のできものが何度もできたり消えたりすると感じる方もいます。
歯肉が腫れる
歯根が割れた歯の周囲の歯肉が腫れることがあります。歯肉の中で膿ができている状態です。体調によって歯茎が腫れる日もあれば引っ込んでいる日もあります。お痛みはないことがほとんどです。膿の出口がふさがってしまった場合には圧がかかり出すため痛みを感じるようになります。歯の根周辺に細菌のかたまりである膿が溜まっているため口臭が発生しますがご自身で口臭を感じることはありませんが周囲の方は口臭に気が付くこともあります。
噛んだ時の違和感
噛むと違和感を感じたり痛みを感じる場合があります。強く噛んでいると痛く腫れる場合には歯の根にヒビや亀裂が入っている可能性があります。
差し歯が取れやすくなる
差し歯は、ご自身の残っている歯の根に土台を差し込みクラウンを被せています。しかしこの差し歯がしょっちゅう外れてしまう場合には、歯根にヒビや亀裂は入っているか、割れていることがあります。
歯の根の治療をしているが良くならない
歯の根の治療(根管治療)を行っているがなかなか症状が改善せず痛みが治まらないという場合があります。もちろん歯の根の治療方法に問題がある場合もありますが、歯根破折である場合にはどれだけ根管治療を行っても改善しません。歯の根が割れている場合、穴やヒビの隙間から薬が漏れてしまい歯の根の先まで薬が到達せず菌を殺すことができません。歯根破折かどうかの診断が重要です。
神経が生きている歯の場合には激痛が起こる
神経が生きている歯(生活歯)の場合に歯根破折が起こっていると激しい痛みが起こります。ズキンズキンと脈打つような激痛になることがあります。感覚としてはたった1日で起こったように感じます。夜中に歯軋りにより歯が割れてしまいいきなり激痛が起こったという方も少なくありません。
歯根破折の治療法
歯根破折と診断を受けた場合、歯のどの部分で割れているか?によって治療法が変わります。
比較的歯の頭に近い部分で割れた場合は、割れた部分を取り除き、土台を立て被せ物を入れて治療ができる場合があります。
吉本歯科医院での歯を抜かずに残せる基準は以下の4つです。
吉本歯科医院で「歯を抜かないといけない4つの場合」
①歯を支えている骨が無くなってしまっている場合
②歯茎よりも下で歯が割れている、折れている場合
③歯の根っこが縦に割れている場合
④歯の根っこが曲がっている場合
上記の4つの場合以外は一般的な歯科医院さんで「抜歯診断」を受けた場合で歯を抜かずに治療することができることがあります。抜歯診断を受けた方はまずはご相談下さい。
歯根破折の予防法
歯の神経を取らない治療
歯にヒビや亀裂が入らないための最大の予防方法は、「歯の神経を取らない」ということです。
歯の神経を取らなくてはいけないような状態にしないことがまずは大事です。
硬いものを噛まない
硬いものを噛まないことを意識していただくことです。多くの方は「硬いものをしっかりよく噛むと歯が丈夫になる」ということを言われます。そして年齢を重ねた方であっても硬いものをバリバリとよく噛むことを習慣にされている方もいらっしゃいます。しかし、硬いものをしっかり噛んでというのは成長発育中の方だけであり成人した方の場合には日常的に硬いものをバリバリと噛んでいれば歯は劣化し、ヒビが入ったり割れたりします。
雨垂れ石を穿つという言葉があります。
穿つ(うがつ)とは「穴をあける」という意味です。
たとえ小さな力であっても積み重ねていくことで硬い石に穴があいてしまうんだという意味です。毎日の噛む力、そして噛み締め、喰いしばり、寝ている時の歯軋り、これらの噛む力が毎日毎日、何十年も積み重なることによりある日突然歯にヒビが入ったりする方が増えてきたのです。極端に硬いもの、氷や硬いせんべい、引きちぎる力が必要なフランスパンなど毎日このような食事をすることは避けて頂きたいと思います。
喰いしばり歯軋りから歯を守る
歯にとって一番の破壊力は夜寝ている間の噛み締め、食いしばり、です。
夜間、寝ている時というのは私たち人間は無意識にギューッっと噛み締めています。「ギューッ」という強力な噛む力が毎晩積み重なっています。就寝時に喰いしばる癖や歯軋りの癖がある場合は、朝起きると肩こりが激しかったりする場合は喰いしばっていると思われ、歯にヒビが入る原因の一つになります。
吉本歯科医院では歯の破壊を防ぐために夜間就寝時には必ずマウスピースを装着して頂いております。※吉本歯科医院の咬合を安定するマウスピースは7種類あります。
歯が割れて抜歯診断を受けた方はまずはご相談下さい。